むかしのはなし、いまのはなし

叩けばでるでる、アラサーだもの。

不倫中の独身私の言い分

既婚彼は私が勤めていた会社の提携先の人だった。

会社は違ったが、同じプロジェクトに携わっており、ほぼ毎日会社で顔を合わす関係だった。

会社の飲み会や、親睦イベントなどを経て徐々に親しくなり、知り合ってから1年ほどしたころ、仕事の相談をするうちに不倫関係が始まった。

どちらかが一方的に迫ったということはなく、少しずつ距離が縮まり、ゆっくりと惹かれ合っていった、という感じだった。

 

私はもちろん、彼が既婚者だと知っていた。子どもが2人いることも。

 

人生初の不倫だったが、はっきり言って、付き合い当初は割り切っていた。

これは巷でバンバン叩かれているれっきとしたゲス不倫だし、お互い遊びのようなものだと。そんなに長く続かないだろうと。

 

元々私は恋愛体質というか自分の欲求に正直な方で、男性と気軽にデートをするタイプだった。タイミングやムード次第ではそのまま体の関係を持ち、ドライな付き合いをすることもしばしばあった。

そういう関係では、いつも決定権は私にあったし、興味がなくなればあっさりと終わるし、流されてずるずる続くことはなかった。

 

彼との関係も、いつでも終わらせられると思っていた。

 

が、どうにもこうにも彼とはフィーリングが合ってしまったようだった。2~3カ月もすれば、嫉妬をするくらい彼のことが好きになっていた。

恋愛の先の結婚も夢見るようになった。

 

そこまでくれば、気持ちのコントロールが効かなくなる。

嫉妬に狂う、まさにそんな感じ。

ぶつける対象が彼だけで良かった、と今思う。

 

彼に暴言を吐きまくったのち、「もうやめる!」と一方的に宣言し、一方的に連絡を経つのだが、早ければ次の日には「昨日はひどいこと言ってごめんね。」などと連絡をし、ヨリが戻る、ということが何度も何度もあった。

 

全然「いつでもやめられる」状態ではなくなっていた。

 

不倫をやめる、やめないを繰り返しているうちは、私もまだ本気でやめる気はなかったのかもしれない。

最終的には、不倫の終わりには強い意思が必要だった。

それも、私の場合はしっかり苦しんだ後じゃないと、別れを強行するほどの強い意志は持てなかったな。

 

今、書きながら思うけど、私は彼の家族に対する罪悪感はなかったみたい。

彼と別れたのも、私自身が嫉妬の苦しみから逃れたかったからだ。

もう不倫は二度としない、自分のために。

 

自分勝手な欲求で始まり、自分勝手な欲求で終わる。

これは、不倫に限らずどんな恋愛でもそんなもんなのかな。

 

不倫中の既婚彼の言い分

既婚彼と付き合っていたころ、私はよく彼に意地悪を言っていた。スイッチが入ると、

彼を傷つけるためだけのひどい言葉をぶつけまくった。

 

私の”暴走”は、彼の馬鹿正直な言動に対して私が嫉妬する、というのがほとんどだったが、私からそう仕掛けることも多々あった。

からしれっと危ないトピック(主に家族ネタ)を話題にし、彼が地雷を踏む、というような。あれは意図的だった。

彼を嫉妬させるために、他の男性とデートし(体の関係はないけれど)、彼に逐一報告することもあった。

 

暴走車と化す私に対して、彼は毎回私の思惑通りの反応をし、なんとかなだめてくれる、もしくは時間が解決してくれた。彼はロマンチストというか優しいというか、女性に振り回されるのが好きなタイプなんだろうと思う。

 

そんな彼は私の8つ年上で、20代半ばに結婚し、美人な奥さんと子どもが二人いる。

大手企業でそれなりの地位についており、収入も多く、誰もがうらやむような場所にマイホームを持っている。

子どもの学校行事を会社のスケジュールにも入れ、仕事を休んで参加するようなイクメンぶり。

 

そんな、傍から見たら全部持ってるような人がなんで不倫なんてするの?

それ以上何がいるの?結局は余裕がある人の暇つぶしでしょ?

 

嫉妬ももちろんあったが、純粋に疑問だった。

彼の言い分はこう。

 

「外から見えるものだけで判断できることなんて何もない」

「毎日結婚したことを後悔してる」

「ずっと真っ暗だったけど、(私)と出会ってから毎日が明るい、自分に自信を持てた」

 

彼は奥さんとの関係にずっと問題があって、寂しい思いをしてきたようだった。無下に扱われ、男として自信をなくしていたようだった。

彼の私に対する気持ちは本物だと信じている。

でも、やっぱり本当は奥さんと幸せに暮らしたかったのね。それができないから外向いちゃったのね。と思うと悲しかった。

 

「お互いの“好き”という気持ちを大事にしたい」

「別れたくない」

彼のこのスタンスは付き合った当初から別れる日まで変わらなかった。

 

ここは男性と女性の考え方の違いなのかな。それとも既婚者と独身者の考え方の違いなのかな。私の言い分は付き合い当初からどんどん変わっていった。

それはまた次回に書こうと思う。

 

不倫とセックス

「不倫は麻薬」とはよく言ったもので、不倫中のあの盲目感や、高揚感はまさに中毒状態。私自身、身も心もどっぷりと浸かっていた。

不倫が終わった今でも、既婚彼への執着は消えない。

毎日毎日彼のことを思い出し、夜には彼に連絡を取りたくてたまらなくなる。(連絡先消したから取れないのだけど)

スーパーでの買い物、海辺の散歩、夏祭り、映画館など、どこに行っても「彼も好きそう」、「彼と来たかったな」などと考えてしまう。

私のばかばかばか!!

 

不倫がこんなにも厄介なのは、セックスが主な理由だと思う。

 

人を好きになると、その人に触れたいと思うのは自然なことだし、気がある男女のいきつく先にはやっぱりセックスがある。そしてセックスをすると、目には見えない、言葉にもできない”2人だけの温度”を肌で感じられ、満たされる。

ここは不倫も、独身者同士の恋愛も変わらないと思う。

 

違うのは、不倫は会える時間が限られているということ。

既婚者は家に帰らないといけない。泊りなんてほとんどできない。

 

だから不倫って、会えば必ずセックスをする。自由に会える訳ではないから、会える時間をフルに使って求め合う。毎回”集中して”セックスをする、という感じ。

女性は女として求められることの幸せを知る。毎回毎回が大好きな彼とお互いをさらけ出すような濃密な時間。彼との親密度も自然と高くなる。

 

正直、不倫相手とのセックスって、日常生活のすき間時間に折り込まれる非不倫カップルの慣れ合いセックスよりも、10倍はいいと思う。

 

でも、不倫中の未婚女性にとってはここからが悪夢で、まさに天国から地獄。

あんなに甘い幸せな時間を過ごした後に突きつけられる現実。

 

既婚彼は家に帰っていく。奥さんと子どものいる家へ。

独身女性は乱れたベッドを直して一人で眠りにつく。

 

最初はいいんだよね。次会えばご機嫌がなおるから。やっぱり好きって思うから。

でも確実に独身女性側の不倫維持可能指数が減ってくる。

ジャブをくらっては回復し、アッパーをいれられては回復し…を繰り返していたらいつの間にか傷だらけになってるような、そんなダメージの受け方。

 

こうやって独身女性側は傷ついたプライドを取り戻さんとばかりに、既婚彼への執着心がむくむくと沸き、不倫中はもちろん、不倫を終えてからも苦しむことになる。

 

私がうつ病と診断されるまで②

上司にメールで心療内科に行く旨を報告し、次の日はお休みをもらった。

まずはインターネットで心療内科を探した。

メンタルクリニック、精神科、心療内科・・・

何を基準にどう選んでいいか分からなかった。メンタル系の病院に行くのはなんだか怖かった。

それでもとにかく早く病院に行って安心したかったので、家の近所や会社の近くで評判が良さそうところに電話をかけた。

最初の2、3件は予約が埋まっており、最短でも2週間~1か月後待ちと言われた。

勇気を出して電話をしたものの、出鼻をくじかれ、ここで少しパニックになった。

が、気を取り直して電話を何件かし、当日予約が取れるところを見つけた。

その際、受付の人に、「当院は病院ですので、お薬を処方しますが、お薬を飲むことに抵抗はないですか?」と確認された。

私はちょっとひるんだ。

メンタル系の薬を飲むことに抵抗がないといえば嘘になる。でも他に今日行ける病院があるかは分からない。今の状態で宙ぶらりんになることの方が怖かった。

『はい、大丈夫です。必要ならば飲みます。』

と、今では仰々しいとさえ思えるようなやり取りをして、予約が完了した。

 

病院では、問診前にチェックシートを記入した。フィジカル面、メンタル面でどのような症状が出ているかを点数方式で記述するシートだった。

次に、先生との問診。30~40分ほど、じっくり聞いてくれた。

私は今日までの経緯や、諸症状のほか、あと3カ月で今のプロジェクトが終わること、自分で希望した仕事なので最後まで頑張りたいこと、残業は多かったが上司からのパワハラなどはないことを伝えた。ぼろぼろ泣きながら。

涙はその後も私のうつ生活につきまとうことになる。

 

「休みましょう。体を壊してまでしなきゃいけない仕事はないですよ。」

 

先生はとても優しかった。こうした状況になったのは会社のやり方が良くない、社員を大事にしていない、私と同じ会社の患者さんを何人も見てきた、と言い聞かせてくれた。

私が自分を責めないように、との配慮もあったとは思うが、初めて第三者視点、しかも専門医の視点で状況を判断してもらえて、少し救われたような気がした。

 

「まずは上司に伝えて、休職手続きを確認してきてください。診断書が必要になると思うから、また来てくださいね。」と言われ、漢方薬抗不安薬を処方してもらった。

 

正直とても不安だった。自分が、うつ病だなんて。休職することになるなんて。

みんな辛くても頑張っているのに、自分は弱いんだ、と自分のことを責めた。

 

家に帰って地元にいる両親に連絡した。またぼろぼろ泣きながら。

 

気持ちが落ち着いてから。上司に連絡し、明日からはお休みすること、休職手続きについて教えてほしいことをを伝えた。

 

その晩、ここ数カ月で感じたことのないほど深く深く眠れた。

自分がどれほど眠れていなかったか、実感した日だった。

 

私がうつ病と診断されるまで①

うつ病です。明日から会社は休んだ方がいいですね。休職できますか?」

 

初めて行った心療内科で、お医者さんにそう言われたときは、本当にびっくりした。

『え?休む?明日から?あと3カ月で今のプロジェクトが終わるのに?』

自分の中では、専門医に話を聞いてもらって、薬を処方してもらうだけだと思っていた。あと3カ月間、今のプロジェクトを頑張れば解放されると思っていたから。

 

「今、骨折している状態だと思ってください。その状態であと3カ月もジャンプできますか?これ以上悪くなると、起き上がれなくなりますよ。」

 

その言葉で、恐る恐るも次の日から休むことに納得した。

 

私は外資系企業で働いていた。ハードワークの多い、いわゆるバリキャリ系の会社だった。転職して3年目だった。

数カ月~数年のプロジェクト単位で仕事に入るため、プロジェクトが変われば働く場所も、一緒に働く人も変わる、そんな環境だった。

 

当時のプロジェクトに入って2カ月が過ぎた頃、仕事中の手汗が気になるようになってきた。パソコンのキーボードに汗の水滴がつくほど、異常に手汗をかくようになった。

次第に指が荒れるようになった。手汗で指先がふやけ、皮がぽろぽろ剥けた。

自分のぼろぼろの手を見るのはとても嫌だった。

同時期から胃痛、胃のけいれん、吐き気、頭痛などの症状が出ていた。

その頃にはどんなに仕事で疲れていても、朝方まで眠れない、という状態が続いていた。

 

自分の興味に合った仕事内容で、自分で希望したプロジェクトだった。

上司からは期待もされて、必死だった。

仕事はやってもやっても終わらなかった。常に仕事のことが頭から離れなかった。

大好きだった飲み会も、友達からの誘いも行く気にもなれず、時間もなく、ほとんど断っていた。

 

彼氏との電話で、毎晩毎晩「仕事がしんどい。」と泣くようになった。”めそめそ”ではなく、”わんわん”と大泣きしていた。

 

もうだめだ、と思ったのは大型連休明けだった。

前日はほとんど眠れず、会社に行ってメールを開いた途端、また異常なまでの手汗が出だした。

連休中、私の手荒れはずいぶんと良くなっていた。

 

また手がぼろぼろになる ———

 

そう思ったら涙が溢れて、トイレに駆け込んだ。

胃がけいれんし、もうだめだと思った。

そのまま会社のメンタルヘルス相談室に行き、心療内科へ行くよう勧められた。

 

離婚する、離婚しない

既婚彼は、付き合い始めた当初から、「うちは仮面夫婦。」「2人目が生まれてからずっとセックスレス。」「お互い嫌い合ってる。」と言っていた。

会社の飲み会でも彼夫婦の不仲はネタになるくらいだったので、程度の差こそあれど、良い夫婦関係ではなかったのは間違いないと思う。片耳ではあるけれど、奥さんはかなり問題のある人のようだった。

 

私はこうした話を聞きながら彼と不倫関係になったが、彼が離婚する、しないは彼の問題であって私が口をはさむ権利なんてないと思っていたし、間違っても私の存在を彼の離婚の理由にはしてほしくないと思っていた。

 

でも、彼と過ごす時間が長くなるにつれ、関係が深くなるにつれ、彼の甘い言葉と彼の家族の話は私を苦しめるようになった。

私に「大好きだよ。」「人としても、女性としても尊敬してる。」「世界一愛してる。」という彼。

私に「子どもがいなければ絶対に離婚してる。」「明日死んだら絶対後悔する。」「人として許せない人と暮らしているのが苦痛。」「幸せじゃない」という彼。

 

『じゃあ、なんで離婚しないの?』

 

彼本人にぶつけたこともあった。

彼は子どもが理由だと言った。

子どもはかわいい、子どもの生活をマイナスに変えてしまうかもしれない、子どもに会えなくなるかもしれない、と。

 

彼は正直な人だった。

私はすごく嫉妬した。なんの行動も起こさない彼に対する怒りも芽生えた。自分でもびっくりするほど強く。

 

あなたと奥さんが愛し合ったから生まれた子どもでしょう。

かわいい子どもを産んでくれたのは奥さんでしょう。

あなたのやってることは気持ち悪い。

何も手放せないくせに私に好きなんて言わないで。

結局は片手間の恋愛ごっこだね。

あと20年後もそうやって「明日死んだら後悔する」って言ってれば?

 

何度も話を蒸し返しては彼に辛辣な言葉投げつけた。

 

私は、最後まで私を理由に離婚されるのはご免だと思っていたし、仮に彼が離婚したところで「嬉しい!」と思うかどうかは分からない。

 

それでもこうした強い嫉妬を感じたのは、「彼の大切なものは私ではない。」と心のどこかで思ったからだったと思う。

 

それならそれでいい。

 

だったら「大切なもの」を大切にしたらいい。夫婦仲が良くなるように、家族みんなで幸せを感じられるように最大限努力すればいい。

私との関係をさっさと終わらせて、家に帰ればいい。

 

1年6カ月の間、最初から最後まで彼の言ってることは何も変わらなかった。

離婚するにしても、夫婦仲を再構築するにしても、今より状況が良くなるような行動を起こさなかった。

その行動力のなさに心底イライラした。

 

振り返ってみると、不倫中も不倫を終えてからも、私は彼に対する「怒り」を感じているようだ。この感情、早く手放したい。

「好きで、好きで、好きで」の裏側

私は既婚彼のことが、大好きだった。

 

優しい顔、体型、ファッション、低い声、匂い、キスの味、肌の触り心地・・・

五感すべてで好きだったと思う。

匂いなんかはもう遺伝子レベルで好きだったんじゃないかな。

 

加えて、同じものを感じた時に同じ感想をもつ、価値観の合う人だった。

そうすると、自然に2人での生活が簡単に想像できた。

もし一緒に住んだら、こんな部屋にしよう、週末はここにお出かけしよう、晩ご飯にはこれを作ろう、などなど。

 

完全にお花畑。

 

不倫関係が終わった今思えば、私は”自分の目に映る彼”しか見えていなかった。それなのに、彼の全てを愛したかのように、「好きで、好きで、好きで」どうしようもない状態になっていた。

本当は、誰かの夫であり、父親でもあるのに。

寝てから仕事に行くまでの彼が、休みの日の彼が、どんな風なのか知らないのに。

 

彼は私の表も裏も、すべて見えていたと思う。

私の家にも来ていたし、毎日毎日メールをし、交友関係も知っていたから。

その上で私のことをとても大事にしてくれていた。

可能な限り最大限私に会いに来てくれ、毎日毎日遅くまでメールをしてくれ、全身全霊で「好き」と伝えてくれていた。

 

でも私は、家で過ごす時の彼を知らない。想像するだけで嫉妬でおかしくなりそうだったから、知ることも避けていたと思う。

だからずっと不安で、心のどこかで彼のことを信頼できなかった。

 

果たして、彼の裏を知っても、彼が”夫”のとき、”お父さん”のときを目の当たりにしても、「好きで、好きで、好きで」いられたかな。

たぶん無理だった。嫉妬深い私には、受け入れられなかったと思う。

 

不倫はもう終わり。これで良かったの。