「好きで、好きで、好きで」の裏側
私は既婚彼のことが、大好きだった。
優しい顔、体型、ファッション、低い声、匂い、キスの味、肌の触り心地・・・
五感すべてで好きだったと思う。
匂いなんかはもう遺伝子レベルで好きだったんじゃないかな。
加えて、同じものを感じた時に同じ感想をもつ、価値観の合う人だった。
そうすると、自然に2人での生活が簡単に想像できた。
もし一緒に住んだら、こんな部屋にしよう、週末はここにお出かけしよう、晩ご飯にはこれを作ろう、などなど。
完全にお花畑。
不倫関係が終わった今思えば、私は”自分の目に映る彼”しか見えていなかった。それなのに、彼の全てを愛したかのように、「好きで、好きで、好きで」どうしようもない状態になっていた。
本当は、誰かの夫であり、父親でもあるのに。
寝てから仕事に行くまでの彼が、休みの日の彼が、どんな風なのか知らないのに。
彼は私の表も裏も、すべて見えていたと思う。
私の家にも来ていたし、毎日毎日メールをし、交友関係も知っていたから。
その上で私のことをとても大事にしてくれていた。
可能な限り最大限私に会いに来てくれ、毎日毎日遅くまでメールをしてくれ、全身全霊で「好き」と伝えてくれていた。
でも私は、家で過ごす時の彼を知らない。想像するだけで嫉妬でおかしくなりそうだったから、知ることも避けていたと思う。
だからずっと不安で、心のどこかで彼のことを信頼できなかった。
果たして、彼の裏を知っても、彼が”夫”のとき、”お父さん”のときを目の当たりにしても、「好きで、好きで、好きで」いられたかな。
たぶん無理だった。嫉妬深い私には、受け入れられなかったと思う。
不倫はもう終わり。これで良かったの。