離婚する、離婚しない
既婚彼は、付き合い始めた当初から、「うちは仮面夫婦。」「2人目が生まれてからずっとセックスレス。」「お互い嫌い合ってる。」と言っていた。
会社の飲み会でも彼夫婦の不仲はネタになるくらいだったので、程度の差こそあれど、良い夫婦関係ではなかったのは間違いないと思う。片耳ではあるけれど、奥さんはかなり問題のある人のようだった。
私はこうした話を聞きながら彼と不倫関係になったが、彼が離婚する、しないは彼の問題であって私が口をはさむ権利なんてないと思っていたし、間違っても私の存在を彼の離婚の理由にはしてほしくないと思っていた。
でも、彼と過ごす時間が長くなるにつれ、関係が深くなるにつれ、彼の甘い言葉と彼の家族の話は私を苦しめるようになった。
私に「大好きだよ。」「人としても、女性としても尊敬してる。」「世界一愛してる。」という彼。
私に「子どもがいなければ絶対に離婚してる。」「明日死んだら絶対後悔する。」「人として許せない人と暮らしているのが苦痛。」「幸せじゃない」という彼。
『じゃあ、なんで離婚しないの?』
彼本人にぶつけたこともあった。
彼は子どもが理由だと言った。
子どもはかわいい、子どもの生活をマイナスに変えてしまうかもしれない、子どもに会えなくなるかもしれない、と。
彼は正直な人だった。
私はすごく嫉妬した。なんの行動も起こさない彼に対する怒りも芽生えた。自分でもびっくりするほど強く。
あなたと奥さんが愛し合ったから生まれた子どもでしょう。
かわいい子どもを産んでくれたのは奥さんでしょう。
あなたのやってることは気持ち悪い。
何も手放せないくせに私に好きなんて言わないで。
結局は片手間の恋愛ごっこだね。
あと20年後もそうやって「明日死んだら後悔する」って言ってれば?
何度も話を蒸し返しては彼に辛辣な言葉投げつけた。
私は、最後まで私を理由に離婚されるのはご免だと思っていたし、仮に彼が離婚したところで「嬉しい!」と思うかどうかは分からない。
それでもこうした強い嫉妬を感じたのは、「彼の大切なものは私ではない。」と心のどこかで思ったからだったと思う。
それならそれでいい。
だったら「大切なもの」を大切にしたらいい。夫婦仲が良くなるように、家族みんなで幸せを感じられるように最大限努力すればいい。
私との関係をさっさと終わらせて、家に帰ればいい。
1年6カ月の間、最初から最後まで彼の言ってることは何も変わらなかった。
離婚するにしても、夫婦仲を再構築するにしても、今より状況が良くなるような行動を起こさなかった。
その行動力のなさに心底イライラした。
振り返ってみると、不倫中も不倫を終えてからも、私は彼に対する「怒り」を感じているようだ。この感情、早く手放したい。